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不安障害 - まつしまメンタルクリニック

不安障害とは

──脳と心のしくみから理解する不安とその支援──

日常生活の中で私たちは、さまざまな「不安」を感じながら生きています。不安は決して悪いものではありません。危険を予測し、それに備えるための自然な感情であり、生き延びるための本能的な防御反応でもあります。

しかし、この不安が強くなりすぎると、思考・感情・行動・身体のあらゆる面に影響を及ぼし、日常生活に支障をきたすようになります。このような状態が長く続くと、「不安障害」と呼ばれます。

不安障害は、誰もがかかりうるこころの不調の一つです。背景には脳の働き、性格傾向、環境、過去の経験などさまざまな要因が関係しています。

■ 不安とはなにか?

不安は、「これから悪いことが起きるかもしれない」という予測に基づく感情です。試験や人前での発表、重要な決断の前など、誰しもが経験するこの感情は、私たちを慎重にさせ、危険を避ける行動を促す機能があります。

しかし、その予測が過剰になると、「本当は大丈夫なのに不安が止まらない」「避けたくなる」「体がこわばる」「ずっと考え続けてしまう」といった状態が続き、心身に強い負担がかかってしまいます。

■ 不安の脳内メカニズムと神経ネットワーク

不安は脳内の特定のネットワーク(神経回路)の活動によって引き起こされます。不安の神経回路(不安ネットワーク)には以下のような部位が関係しています。

  • 扁桃体:恐怖・脅威を検知するセンサーのような働き

  • 前部帯状回(ACC):不快な感情をモニターし、注意を向けさせる

  • 島皮質(insula):内臓感覚と感情をつなぐ役割

  • 海馬(hippocampus):記憶を文脈化し、状況に応じた意味づけを行う

  • 前頭前野(特に背外側部):冷静な判断や感情の制御を担う

不安ネットワークは「情動ネットワーク」と重なっていて、喜び・怒り・悲しみなどの感情と深く関わっています。不安ネットワークと情動ネットワークは重なり合いながら働いていて、不安が強くなると、これらのネットワークのバランスが崩れ、情動の制御が困難になることがあります。

■ 症状の多様性とその背景

不安障害は一つの病名ではなく、以下のような多様な状態を含みます。

  • パニック障害:理由なく突然強い不安発作に襲われる

  • 社交不安障害:人前に出る・注目されることに強い恐怖を感じる

  • 全般性不安障害:さまざまな出来事について慢性的に心配し続ける

  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD):トラウマ体験の再体験や過剰な警戒反応

※かつては「不安障害」に含まれていた**強迫性障害(OCD)**は、現在では独立した診断カテゴリーとされています。ただし、反復的行動を通じて不安を和らげようとする仕組みは共通しており、理解のうえでの連続性は重要です。

こうした症状が多様になる背景には、脳が「こうなるはず」と予測しながら現実と比較する予測モデルの働きがあります。不安障害ではこの予測が「悪い未来」に偏っており、わずかなズレ(予測誤差)でも「危険」と判断してしまいます。そのため、「確認」「回避」「準備しすぎ」といった行動が繰り返され、かえって不安が強まるという悪循環が生じます。

■ 不安と抑うつの関係

不安障害の方はしばしば、うつ状態も併発します。不安は「未来」に、抑うつは「過去」にとらわれた心の状態とされますが、脳科学的には共通するネットワークの障害として捉えることができます。

  • 扁桃体・前頭前野・ACC・海馬・島皮質といった部位が共通して関与

  • いずれも、感情の調整や予測の制御がうまくいかない状態

ただし、不安と抑うつは同一ではなく、それぞれの症状に応じた丁寧な理解と対応が必要です。

■ 性格との関係

きまじめさ・感受性の高さ・心配性・責任感の強さといった性格傾向が、不安の表れ方に影響します。
しかし、これらは“なりやすさ”に関わる要素であり、性格と脳の働きが相互に影響しながら、不安が強まっていく仕組みを理解することが、支援の第一歩になります。

■ 治療と支援のアプローチ

不安障害に対しては、脳と心の両面からのアプローチが効果的です。

(1)薬物療法

  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬):不安や抑うつに効果があり、脳内ネットワークのバランスを整える

  • 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など):即効性があり、不安発作や不眠に有効。日常臨床では、不安の強い時期に「支え」として大きな役割を果たします。依存や眠気の問題はありますが、適切に使えば非常に有用な薬剤です。

(2)認知行動療法(CBT)

考え方の偏りや過剰な予測に気づき、現実に即した柔軟な思考を育てます。また、不安を避けずに体験することで、新たな予測モデルを脳に学ばせていく“曝露”の技法も用いられます。

(3)体験的な安心の積み重ね

マインドフルネスや森田療法など、不安を「なくす」よりも「共にある」状態で生きることを学びます。不安は消すべき“敵”ではなく、うまくつきあっていく対象なのです。

■ 支援のために大切なこと

不安障害の方への支援で大切なのは、「気の持ちよう」とせず、不安という脳の働きに対する理解をもつことです。

  • 「不安をなくそう」ではなく、「不安があっても行動できる」ように支える

  • 無理に励まさず、共に考える姿勢を大切にする

  • 小さな一歩や経験を肯定し、安心を積み重ねていく

不安は、命を守るために脳が働かせる大切なシステムです。だからこそ、その働きが過剰になると生きづらさを感じるのです。ですが、そのメカニズムを知り、上手に対応していくことで、不安はやがて「自己理解の入り口」や「成長のヒント」にもなりえます。


心 こころ とは

「こころ」とは、脳が外界や他者、自己について行っている意味づけ、予測、価値判断、行動選択といった情報処理の働きが、主観的な体験としてまとまって現れたものを指します。不安、抑うつ、怒り、意欲の低下、考えがまとまらない感じなどは、いずれも脳の情報処理のあり方が体験として表れたものです。こころは脳とは別に存在するものではなく、同じ現象を異なる水準から見ているものと考えています。

こころの不調とは、こうした働きの一部が過剰に固定されたり、逆に十分に働かなくなったりして、全体としての柔軟性や切り替えの力が低下している状態です。これは「壊れてしまった」というよりも、「偏り、固まり、動きにくくなっている」状態と捉える方が適切です。その背景には、生活上のストレス、睡眠の乱れ、体調の変化、発達特性、脳の疲労など、さまざまな要因が関与します。


不安障害の病態と治療について

不安障害とは 不安によって心身の反応が柔軟に切り替わらなくなっている状態であり その治療とは とらわれを緩め 柔軟性を回復していく過程である ととらえると 次のような文章になります。

不安障害とは何か

不安は、人が危険を察知し身を守るために本来備えている、重要な心身の反応です。
しかし、この不安が過剰に、あるいは長く続くようになると、日常生活や社会生活に支障をきたすことがあります。このような状態が、不安障害と呼ばれます。

不安障害は、「不安が強い病気」「心配性の性格」と誤解されやすい側面がありますが、現在では、単に不安の量が多いというよりも、不安によって心身の反応が柔軟に切り替わらなくなっている状態として理解されることが増えています。

不安障害で起きていること

不安障害では、次のような現象が同時にみられることが少なくありません。

  • 考え方が一つの方向から動きにくくなる

  • 回避や確認など、同じ行動パターンを繰り返してしまう

  • 動悸、息苦しさ、緊張、不眠などの身体反応が続く

これらは別々の問題ではなく、認知(考え方)・行動・身体反応が同時に影響を受け、同じ型に固定されてしまうことで生じます。

この状態を、臨床的には「心身の反応が拘束された状態」と捉えることがあります。
拘束とは、意志や努力で簡単に外せるものではなく、切り替えそのものが起こりにくくなっている状態を意味します。

「気にしないようにする」が難しい理由

不安障害のある方は、「考えすぎないようにしよう」「気にしなければいい」と自分に言い聞かせても、うまくいかないことが多くあります。

これは性格の問題や努力不足ではありません。
不安障害では、脳や身体の反応が不安に強く引き寄せられ、別の反応へ移る余地が小さくなっているためです。

このため、不安を無理に抑え込もうとすると、かえって注意が不安に集中し、状態が長引いてしまうこともあります。

不安障害の病態理解:柔軟性の低下という視点

近年の研究や臨床経験から、不安障害は次のように理解されることがあります。

不安障害とは、不安によって
心身の反応の「自由度」や「柔軟性」が低下した状態である。

本来、人の心身は状況に応じて反応を切り替えます。しかし不安障害では、

  • 反応の選択肢が狭くなる

  • 同じ反応から抜け出しにくくなる

といった変化が起こります。このため、生活上の困りごとが持続しやすくなります。

治療の基本的な考え方

不安障害の治療は、「不安を完全になくすこと」を目標とするものではありません。
現在の医療では、

不安があっても、心身の反応が一つに縛られ続けない状態を回復すること

が、現実的で重要な治療目標と考えられています。

このため、治療は一つの方法に限られず、状態に応じて複数のアプローチが組み合わされます。

薬物療法の位置づけ

薬物療法は、不安障害の治療において重要な役割を果たします。
ただし、薬は「不安を無理に消すもの」と理解するよりも、

  • 過度な緊張や覚醒を和らげ

  • 心身が切り替わる余地を作る

ための治療と考える方が、実態に近いとされています。

不安が強く、睡眠障害や身体症状が目立つ場合には、薬物療法によって状態を安定させることで、日常生活や心理的な取り組みがしやすくなります。

心理的な治療について

不安障害に対しては、さまざまな心理的治療が用いられています。

  • 行動に注目し、回避や固定化した行動パターンを見直す方法

  • 考え方の偏りを整理し、別の見方が浮かびやすくなるよう支援する方法

  • 不安との付き合い方そのものを変え、不安があっても生活が止まらないようにする方法

  • 安心して話せる関係の中で、心身の緊張が自然に緩むのを支える方法

これらは互いに排他的なものではなく、不安による拘束がどこに強く出ているかに応じて使い分けられます。

回復とはどのような状態か

不安障害からの回復は、症状が完全に消えることと必ずしも一致しません。
多くの人が回復を実感するのは、

  • 不安が出ても、そこに支配され続けなくなった

  • 考え方や行動を切り替えられる感覚が戻ってきた

と感じられるようになったときです。

これは、心身の柔軟性が回復しつつあるサインと考えられます。

おわりに

不安障害は、誰にでも起こり得る心身の状態の変化です。
それは性格の問題でも、努力不足の結果でもありません。

医療の役割は、不安に縛られた状態を理解し、
心と体が再び切り替わる余地を取り戻す過程を支えることにあります。

不安障害について正しく理解することは、治療への不安を減らし、回復への第一歩となります。

以上の文章は chat GPTを利用して 不安障害についての理解と経験をまとめました。


不安障害の類型

精神科外来で最も多いのが神経症圏の病態です。かつて 非器質性で心因性の心身の機能障害を神経症といい 不安、強迫思考や行動、および身体的症状など 心理的なストレスに起因すると考えられるさまざまな症状を含んでいました。

神経症性障害として 
不安神経症 ヒステリー 恐怖症 強迫神経症 抑うつ神経症 神経衰弱症 離人神経症 心気神経症 
などの類型があり これらは ICD-9まで神経症性障害としてひとくくりにされ 神経症(neurosis)≒不安障害(anxiety disorders)として広く使われていました。

 

DSM-Ⅲ(精神障害の診断と統計のためのマニュアル第3版 アメリカ精神医学会 1980)やDSM-Ⅳ(1994)では これらの類型をばらばらにして 
 不安性障害 (不安神経症 恐怖症 強迫神経症 など)
 身体表現性障害(ヒステリー転換型 心気神経症 心因性疼痛など) 
 解離性障害(ヒステリー解離型) 
 気分障害(抑うつ神経症)
などに分類しました。さらにDSM-5(2013)DSM-5-TR(2022)になりました。


1994年から使われているICD-10(国際疾病分類第10版)ではDSM-Ⅳに合わせて 神経症という診断名をやめて 
F4 神経症性障害、ストレス関連障害、および身体表現性障害 のカテゴリーとして
 恐怖症性不安障害(広場恐怖 社会恐怖 特定の恐怖症)
 他の不安障害(パニック障害 全般性不安障害 混合性不安抑うつ障害)
 強迫性障害(強迫神経症)
 重度ストレス反応および適応障害(急性ストレス反応 外傷後ストレス障害 適応障害)
 解離性(転換性)障害(解離性健忘 解離性遁走 解離性昏迷 トランスおよび憑依障害 解離性運動障害 解離性けいれん 解離性知覚麻痺および知覚脱失 混合性解離障害 多重人格障害 ガンザー症候群)
 身体表現性障害(身体化障害 心気障害 身体表現性自律神経機能不全 持続性身体表現性疼痛障害)
 他の神経症性障害(神経衰弱 離人・現実感喪失症候群)
と分類しました。不安障害が明確に定義され 特定の障害がこのカテゴリーに含まれるようになりました。

 

2022年のICD-11では ICD-10のF4カテゴリーは 第6章 精神的、行動的、神経発達的障害群になり 次のように分類されています。
 神経発達症群 (Neurodevelopmental disorders)
 統合失調症または他の一次性精神症群 (Schizophrenia or other primary psychotic disorders)
 気分症群 (Mood disorders)
 不安または恐怖関連症群 (Anxiety or fear-related disorders)
 強迫症または関連症群 (Obsessive-compulsive or related disorders)
 ストレス関連症群 (Disorders specifically associated with stress)
 解離症群 (Dissociative disorders)
 食行動症または摂食症群 (Feeding or eating disorders)
 排泄症群 (Elimination disorders)
 身体的苦痛症群または身体的体験症群 (Disorders of bodily distress or bodily experience)
 物質使用症群または嗜癖行動症群 (Disorders due to substance use or addictive behaviors)
 衝動制御症群 (Impulse control disorders)
 秩序破壊的または非社会的行動症群 (Disruptive behavior or dissocial disorders)
 パーソナリティ症群および関連特性 (Personality disorders and related traits)
 パラフィリア症群 (Paraphilic disorders)
 作為症群 (Factitious disorders)
 神経認知障害群 (Neurocognitive disorders)
 性の健康に関連する状態 (Conditions related to sexual health)

 

ICD-11の不安または恐怖関連症群には 全般不安症 パニック症 広場恐怖症 限局性恐怖症 社交不安症 分離不安症 場面緘黙 などが含まれています。
強迫性障害・重度ストレス反応および適応障害・解離性障害・身体表現性障害が 不安障害群と独立した分類になっています。

 

近いうちにICD-11が使われる予定ですが、行政文書を始め各種診断書類は今のところICD-10の障害分類を使っています。

現在の疾病分類では、 不安障害は 過去の「不安障害」「神経症」と意味合いが異なっています。それでも臨床場面では 不安症状を主とする状態に対して 広汎なカテゴリーを含んんだ意味合いで 「不安障害」が用いられています。ベンゾジアゼピン系抗不安薬の添付文書における適応病名は 今でも神経症や心身症です。