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不安障害

不安障害

不安障害とは、過剰な反すう(英語版)や心配、恐怖の特徴を有するいくつかの異なる種類の一般的な精神障害を含んだ総称である。 不安は、身体と精神の健康に影響を及ぼす可能性があり、通常以上の強い病的不安が長引く場合は、全般性不安障害を疑って早期に心療内科や精神科を受診されることおすすめします。また、患者さんに大きなストレスがかかっている時は、ストレスがやわらぐようなサポートが必要です。

不安障害の種類

適応障害
適応障害は、ある特定の状況や出来事が、その人にとってつらく耐えがたく感じられ、精神症状、身体症状、また行動面に症状が現れる心の病気です。症状として、憂うつな気分、不安感、意欲や集中力の低下、イライラ感等、身体症状として頭痛、めまい、動悸、倦怠感等が認められます。また、無断欠席や無謀な運転、けんか、物を壊すなどの行動面の症状もみられることがあります。 うつ病と似た症状も見られますが、ストレスとなる状況や出来事がはっきりしているので、その原因から離れると、症状は次第に改善する点がうつ病とは異なります。また、ストレス因から離れられない、あるいは取り除けない状況では、症状が慢性化することもあります。一方で、その人の環境への適応力も関係していることも多く、薬物療法だけではうまくいかない場合には、ご本人の適応力を高める目的で認知行動療法等の精神療法や環境調整等が必要になります。
社会不安障害
例えば、結婚式でスピーチを頼まれた場合、誰でも恥ずかしいと思うことはあるかもしれません。しかし、この病気の場合、スピーチを頼まれた時から失敗して他人から馬鹿にされるのではないかと、プレッシャーや不安を感じてしまいます。このように、他人から評価を受けることや、人目を浴びる行動に対する不安のため、その状況に対し強い苦痛を感じて動悸や息苦しさ等の身体症状が現れ、次第にそうした場面を避けるようになり、日常生活に支障をきたす病気のことをいいます。
思春期前から成人早期にかけて発症することが多いこの病気は、慢性的になり、人前に出ることを恐れるようになると、「うつ病」等のさらなる精神疾患の引き金となることもあります。単なる性格の問題ではなく、精神療法や薬物療法によって症状が改善することがある心の病です。
パニック障害
突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、息苦しさ、吐き気、手足の震えといった発作を起こし、そのために生活に支障が出ている状態をパニック障害といいます。このパニック発作は、死んでしまうのではないかと思うほど強く、自分ではコントロールできないと感じます。そのため、また発作が起きたらどうしようかと不安になり、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになります。その人なりに危ない場面があり、例えば電車やエレベーターの中など閉じられた空間では「逃げられない」と感じて、外出することが困難になってしまうことがあります。
パニック障害では薬による治療と合わせて、苦手なことに少しずつ慣れていく心理療法が行われます。無理をせず、自分のペースで取り組むことが大切です。
強迫性障害
強迫性障害は不安障害の一型で、その病態は、強迫観念と強迫行為に特徴づけられます。強迫観念は無意味ないし不適切、侵入的と判断し無視や抑制しようとしてもこころから離れない思考やイメージなどで、強迫行為は主に強迫観念に伴って高まる不安を緩和したり打ち消すための行為です。そのばかばかしさや、過剰であることを自ら認識してやめたいと思いつつも、行ってしまう傾向があります。 具体的には、トイレのたびに「手の汚れ」を強く感じ、その不安から執拗に手洗いを続けたり、泥棒や火事の心配から、外出前に施錠やガス栓の確認をきりなく繰り返したりします。強迫性障害の主要な治療は、SSRIを主とした薬物、および認知行動療法です。さらに病気自体や治療および対処などについて、患者さんや家族などに十分な理解をうながす心理教育は、治療的動機づけを高めかつ周囲からの一貫した支持を得て、安定的治療環境を構築するうえで重要です。
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精神科外来で最も多いのが神経症圏の病態です。かつて 非器質性で心因性の心身の機能障害を神経症といい 不安、強迫思考や行動、および身体的症状など 心理的なストレスに起因すると考えられるさまざまな症状を含んでいました。
神経症性障害として 
不安神経症 ヒステリー 恐怖症 強迫神経症 抑うつ神経症 神経衰弱症 離人神経症 心気神経症 
などの類型があり これらは ICD-9まで神経症性障害としてひとくくりにされ 神経症(neurosis)≒不安障害(anxiety disorders)として広く使われていました。

 

DSM-Ⅲ(精神障害の診断と統計のためのマニュアル第3版 アメリカ精神医学会 1980)やDSM-Ⅳ(1994)では これらの類型をばらばらにして 
 不安性障害 (不安神経症 恐怖症 強迫神経症 など)
 身体表現性障害(ヒステリー転換型 心気神経症 心因性疼痛など) 
 解離性障害(ヒステリー解離型) 
 気分障害(抑うつ神経症)
などに分類しました。さらにDSM-5(2013)DSM-5-TR(2022)になりました。


1994年から使われているICD-10(国際疾病分類第10版)ではDSM-Ⅳに合わせて 神経症という診断名をやめて 
F4 神経症性障害、ストレス関連障害、および身体表現性障害 のカテゴリーとして
 恐怖症性不安障害(広場恐怖 社会恐怖 特定の恐怖症)
 他の不安障害(パニック障害 全般性不安障害 混合性不安抑うつ障害)
 強迫性障害(強迫神経症)
 重度ストレス反応および適応障害(急性ストレス反応 外傷後ストレス障害 適応障害)
 解離性(転換性)障害(解離性健忘 解離性遁走 解離性昏迷 トランスおよび憑依障害 解離性運動障害 解離性けいれん 解離性知覚麻痺および知覚脱失 混合性解離障害 多重人格障害 ガンザー症候群)
 身体表現性障害(身体化障害 心気障害 身体表現性自律神経機能不全 持続性身体表現性疼痛障害)
 他の神経症性障害(神経衰弱 離人・現実感喪失症候群)
と分類しました。不安障害が明確に定義され 特定の障害がこのカテゴリーに含まれるようになりました。

 

2022年のICD-11では ICD-10のF4カテゴリーは 第6章 精神的、行動的、神経発達的障害群になり 次のように分類されています。
 神経発達症群 (Neurodevelopmental disorders)
 統合失調症または他の一次性精神症群 (Schizophrenia or other primary psychotic disorders)
 気分症群 (Mood disorders)
 不安または恐怖関連症群 (Anxiety or fear-related disorders)
 強迫症または関連症群 (Obsessive-compulsive or related disorders)
 ストレス関連症群 (Disorders specifically associated with stress)
 解離症群 (Dissociative disorders)
 食行動症または摂食症群 (Feeding or eating disorders)
 排泄症群 (Elimination disorders)
 身体的苦痛症群または身体的体験症群 (Disorders of bodily distress or bodily experience)
 物質使用症群または嗜癖行動症群 (Disorders due to substance use or addictive behaviors)
 衝動制御症群 (Impulse control disorders)
 秩序破壊的または非社会的行動症群 (Disruptive behavior or dissocial disorders)
 パーソナリティ症群および関連特性 (Personality disorders and related traits)
 パラフィリア症群 (Paraphilic disorders)
 作為症群 (Factitious disorders)
 神経認知障害群 (Neurocognitive disorders)
 性の健康に関連する状態 (Conditions related to sexual health)
強迫性障害・重度ストレス反応および適応障害・解離性障害・身体表現性障害が 不安障害群と独立した分類になっています。
近いうちにICD-11が使われる予定ですが 今のところ 行政文書を始め各種診断書類はICD-10の障害分類を使っています。

 

現在の疾病分類では 不安障害は全般性不安障害・パニック障害・社交不安障害・特定の恐怖症のことを言い 過去の「不安障害」「神経症」と意味合いが異なっています。それでも臨床場面で 不安症状を主とする状態に対して 広汎なカテゴリーを含んんだ意味合いで 「不安障害」が用いられています。ベンゾジアゼピン系抗不安薬の添付文書における適応病名は 今でも神経症や心身症です。